治療法(全般)

治療法(全般)

当院では「飯田橋メンタルクリニックへようこそ」という冊子を作成しております。
その冊子には、当院の治療について詳しく解説した本です。クリニックにて100円にて販売しておりますので、ご希望の方は、受付までお申し付けください。
※下記の記事は、その冊子より引用しています

Ⅰ はじめに(メンタルな病気とは?)

はじめまして、飯田橋メンタルクリニック院長、三宅です。この冊子は、当院で行っている治療や検査などを御紹介するために作りました。普段あまりご説明できないので、せっかくの治療法や検査をご利用になれない場合があるのではないかと考えたからです。この冊子は、多くの部分は三宅が執筆しましたが、各治療法などについては、その専門のカウンセラー、臨床検査技師、受付スタッフで分担して執筆しました。詳しくは各々の章をご覧いただきたいのですが、まず、その前提として、メンタルな病気には、どんな種類があるのか説明しようと思います。

メンタルな病気は、とても複雑で分かりにくい、という印象を持たれていると思います。分かりにくいことの理由の一つは、病気の「出どころ(原因)」がいろいろあるからです。下図は、その病気の出どころについてご説明しようと考えて作った図です。

そもそも、「精神」といっても、実は、「心」と呼んだほうが良い部分②と「脳(の機能)」と考えたほうがいい部分③があります。
この図は、その2つの部分を中心に、その周辺の関連する要因を書加えたものです。「精神」は、外界といろいろなやりとり①をしながら、一方、その根底で身体とも接し、密接な関係を持っています④。
メンタルな病気は、その①から④の各部分から其々病気が発生するのです。
それでは次に、それらの病気を挙げながら、病気に対する治療について述べてみたいと思います。


①「外界との軋轢」

「上司と合わなくて…」とか「不慣れな仕事がストレスで…」といった理由で、反応性のうつ状態となる方がいます。つらい状況とは思いますが、その状態が「うつ病」かと訊かれるとちょっと違うのです。その証拠に、そういった方が部署を変えてもらったり休職に入ったりすると、嘘のように病状が軽くなったりします。うつ病ではそんなに早く治りません。こういう、外界との軋轢から生じる反応性のうつ状態のことを「適応障害」と呼びます。「適応障害」の方に対して最も有効な治療は、環境調整、つまり異動させてもらったり、あるいは自ら転職するとか、そういうことでしょう。しかし、会社によってはそれほど容易に異動させてもらえるわけでもありません。また、変えてもらった部署で、またうまくいかなくなって適応障害を起こす場合もあります。その場合には、ご自分の問題を見つめなおし、カウンセリングなどで、自分が変わっていく必要があるでしょう。当院で行っている認知行動療法も効果があります。

②「心」

心身症という病気があります。ストレスによって身体にいろいろな症状が出てしまうという病気ですね。この病気は、「心」が出所である病気の代表です。なかなか治りづらい病気なのですが、当院で行っている「箱庭療法」が有効であることが知られています。そもそも心身症になる人は、ストレスを言葉で表現することが苦手で、そのせいでストレスを体で受け止めてしまい、そのため身体症状が出てしまうと考えられています。そういった方にとって、元々苦手な、言葉を使うカウンセリングでは、あまり効果が出ません。それよりも、言葉を使わないで、身体を使って何かを表現する箱庭療法のほうが、ストレスを発散しやすいのは当然であり、そのおかげで、病気が良くなっていくのでしょう。さて、不安障害という病気もあります。昔で言う対人恐怖、強迫神経症などがこれに含まれます。この病気は、昔はノイローゼと呼ばれており、「心」を出所とする病気の代表と考えられていました。しかし、最近の医学の進歩により、不安障害も、ある程度、脳の問題が関与していることが分かってきました。実際に薬(主にSSRIという薬です)がよく聞きます。しかし、そもそも不安障害は、うつ病のように、ある時期が終われば治りきるという病気ではなく、慢性的に続いていく病気です。薬だけの治療では、漫然と、いつまでも薬を飲み続けることになってしまいます。それを避けるためには、何らかの精神療法を併用するのが良いでしょう。当院で行っている森田療法は、不安障害の治療のために創始された優れた治療法です。また、認知行動療法も有効です。

③「脳」

メンタルな病気の多くは、実は脳に原因を持っています。脳も考えてみれば一つの内臓なので、メンタルな病気も意外に身体の病気に似たものであるわけですね。さて、図1の③の台形の部分を、さらに図2のように、2つの部分に分けてみて考えると、病気の理解も深まると思います。図の2つの部分の分け方は、通常の検査(CT、MRI、脳波検査など)で異常がみつけられる程度の障害があれば、「粗大な障害」とし、それらの検査で異常が見つけられなければ、「微細な障害」とする、と考えてください。

さて、「うつ病」は、最先端の研究の結果や、薬が確実に効くことから、脳の病気と考えられています。ところが、CTやMRI、脳波検査などの検査では、明らかな異常がみつからないのです。おそらく、それらの検査方法では感知できないほどの、微細なレベルでの失調に起因しているのでしょう。この、微細なレベルの脳の失調から起こる病気には、他にも「双極性障害」や「統合失調症」などもあげられます。このグループの病気に対する治療は、はいずれも薬物療法が中心です。重症の方には電気ショック療法がおこなわれる場合もあります。認知行動療法は、その創始期にはうつ病の方を対象に創始された治療法です。もちろん認知行動療法は有効なのですが、薬物療法と併用したほうが、より有効となる印象があります。なお、治療する場としては、入院もお勧めです。そもそもうつ病の治療の基本は「絶対安静と服薬」と言われています。しかし、家ではなかなか絶対安静とまではできないものです。特にご家族のいる女性の方など、家事をやらざるを得ないでしょう。そこにいくと、入院による治療となると、家からは引き離されるので、ゆっくりと休むことができます。最近では、うつ病の方専門の「ストレスケア病棟」という病棟を持つ病院が増えています。そこでは、「休息入院」と呼ばれる入院が行われていて、施設によっては、3泊4日程度から受け付けてもらえます。そこで短期間の入院をすることによって、治療に弾みがついて、良くなっていく方もたくさんいらっしゃいます。一方、休職や入院をされてから改善し、社会復帰目前、といった方に対しては、最近では、「リワークプログラム」といった試みがなされています。精神科におけるデイケア施設と考えていただいていいと思います。病院や大きなクリニックに併設されちることが多いのですが、そこに、患者さんに集まってもらい、スケジュールに則って、様々な活動をしていただきます。それを月曜日から金曜日まで繰り返すわけで、それだけで少なくとも通勤の準備になります。その上、プログラムの中には、病気に関する説明や、会社での困った状況に対する、対処法、といったレクチャーなどもあり、とてもためになります。リワークプログラムを経てから復帰した方は、それを経ない方に比べて再発が少ないことが知られています。なお、ここで述べた入院による治療や、リワークに関しては、当院では施行しておりません。しかし、ご紹介できる機関がありますので、お気軽にお問い合わせください。

さて次に、下の方の台形、「粗大な脳の障害」です。ここにはいろいろな病気が入ります。CTやMRIで分かる様々な傷跡に起因する人格の変化もありますし、脳にできる癌を原因とする、うつ状態や幻覚妄想状態も入るでしょう。さらには、認知症もこのグループの一つと考えていいでしょう。さらに脳波検査では、CTやMRIではわからない、もう少し細かい障害が分かることがあります。例えば、「てんかん」です。特有の「てんかん性の発作波」という異常が出るので、病気の診断に役立つのです。ところで、てんかんはなくても、「てんかん性の発作波」がみられることが多い病気があります。それは、「発達障害」という病気です。発達障害が疑われる方に脳波検査を施行して、「てんかん性の発作波」がみつかると診断がより確からしくなるわけです。さて、治療ですが、このグループの病気はなかなか治療が難しいというのが実情です。通常の検査で異常がみつかりやすいということは、それだけ大きな障害が脳に生じているということです。その障害を根本的に取り除くことは難しいでしょう。ですから、このグループに入る病気は、慢性的に、ずっと続く病気となってしまうことが多いようです。とはいえ治療法がないわけではありません。薬物療法を例にとっても、認知症には、その進行が遅くなる薬がいくつかあります。また発達障害の中のADHD(注意欠陥多動性障害)という病気には、飲んでいる間は脳の機能が改善し、社会への適応も良くなるような薬が使われています。


④「身体」

一見、精神の病気のように見えながら、実は、その原因が身体の病気にあるということはありえます。例をあげればホルモンの病気です。女性ホルモンの失調が様々な精神の変調を起こすのは特に女性の方は直感的にお分かりいただけると思います。他に有名なのは甲状腺ホルモンの異常です。それが多すぎたり、少なすぎたりすると、躁状態や、うつ状態を引き起こすことがあります。こういった病気(症候性精神病と呼ばれます)については、診断にも様々な検査が必要ですし、当院のような小さなクリニックでは治療は困難です。病院での治療が適切でしょう。当院では、少なくともそういった病気を見逃すことはないように、脳波検査や血液検査を積極的に試みています。身体の病気が原因の場合は、検査で何らかの異常がみられることが多いのです。

さて、これまで、図1にそって、種々の病気とその治療法について、簡単に述べてきました。以下の各章を読まれる際にも、図1を思い浮かべながら読んでいただけると、理解しやすいと思います。なお、これから述べる各種の検査法や治療法について、ご興味があれば、ご遠慮なく院長にお尋ねください。

Ⅱ 薬物療法

「薬物療法」

Ⅲ 森田療法

「森田療法」

Ⅳ 認知行動療法

「認知行動療法」

Ⅴ 箱庭療法

「箱庭療法」

Ⅵ 脳波検査

「脳波検査」

Ⅶ まとめ

「小冊子 まとめ」