認知行動療法

認知行動療法

認知行動療法とは

現在生じている問題を具体的にし、考え方や行動などの変えやすい部分から少しずつ変えていくことで、問題の解決をめざす心理療法です。不安障害とうつ病に対しての効果は研究によって認められています。

治療の対象と診断

  • うつ病についてお悩みの方
  • 不安障害についてお悩みの方
  • 発達障害についてお悩みの方
  • 後ろ向きの考えをやわらげたい方
  • 職場での人間関係に悩まれている方
  • 朝、会社(学校)に行かなければいけないのに、身体や気持ちが重く、行動できない方

治療の対象と診断

私たちは嫌な気分になった時、その原因は起こった出来事のせいだと考えがちです。しかし、認知行動療法では「起こった出来事をどのようにとらえ、どのように行動するかが気分を決めている」と考えます。そのため、考え方や行動を、治療のターゲットにするのです。

「考え方」をターゲットにするとは

認知行動療法では、「出来事に対して考えたこと」を「認知」と呼び、認知をネガティブなものから現実的なものに変えていくことを目指します。カウンセリングでは、これまでに患者さんの人生を通して培われてきた「考え方のクセ」について、その妥当性や有用性を検討します。これは、患者さんのこれまでの考え方を否定するものではありません。患者さんご自身が楽になれる考え方を新しく“加える”試みです。

「行動」をターゲットにするとは

「出来事に対して起こした行動」も認知行動療法では大事なターゲットです。今起こしている行動を別の行動に置き換えることで、気分を悪い方に行かないようにしていきます。カウンセリングでは、まず、これまでに患者さんの人生を通して問題を解決するために培われてきた「対処行動」を振り返ります。そして、新しい対処行動を実践した結果、自分や環境にどのような変化が生じているのかを観察することを通して、柔軟で多様な行動を身につけていきます。

ここでAさんの例を見てみましょう

Aさんは、ある日上司から「1か月後に〇〇プロジェクトに関する重要な会議があるんだ。資料作りを頼むよ。」と言われました。そして、3週間後、Aさんが仕事をしていると、上司から「Aくん、この前お願いした資料はできた?」と聞かれましたが、まだ出来ていないことを伝えると、上司は「まだできていないのか。困ったな。」と眉根を寄せながら言い、その場を離れました。

Aさんは自分のデスクで頭を抱え込み、「やってしまった。自分はダメな人間だ。」「上司に“使えない、価値がない人間だ” と思われてしまった。」「もうこの先仕事をもらえることはないかもしれない。」「会社に貢献できない。自分はここにいる意味がない。」と自分を責める考えがとまらなくなりました。

同時に気分はどんどん落ち込み、誰とも話さないまま就業時間を向かえました。そして翌日、Aさんは頭痛と腹痛のため欠勤してしまいました。

上記の出来事を認知行動療法の観点から見みると次のようになります。

これに対して、次のようなアプローチをしていきます。

考え方にアプローチする
Aさんの例では、仕事が終わっていないことを指摘されただけなのですが、「自分はダメな人間だ」、「自分はここにいる意味がない」「価値がない人間に思われた」などのような考え方によって、落ち込みがどんどん増してしまい、結果として欠勤する、という悪循環に陥ってしまっています。

Aさんは、たとえば「上司に言われた時点で資料ができていなかったからと言って、ダメ人間だという証拠にはならない。」、「上司はもう少し早く資料がほしかったのかもしれないが、会議まではまだ時間がある。なるべく早く資料を作り終えるようにしよう。」などと考え方を変えることができれば、少し気分が楽になるでしょう。

行動にアプローチする
Aさんの例では、上司と話した後、誰とも話さず、暗い気持ちで集中できないまま机に向かってしまっていましたが、この行動も憂うつ感を高める原因になっていると考えられます。

Aさんは、たとえば、気分転換にトイレや自動販売機などに行ってみる、同僚に「上司に嫌な顔されちゃったよ」と話してみたりすることで、行動を変えることができます。そうすることによって、極端な落ち込みをふせぐことができます。また、期日が迫った資料作成に対して気分転換した状態で取り組むことで、より早く資料を作成することができ、その際は上司からほめられることがあるかもしれません。 このように、日常生活で抱える問題や気分の落ち込みなどの症状は、当事者が問題や症状をどのようにとらえ(認知)、どのように行動するか(行動)によってかわります。そのため、認知行動療法では、新しい考え方や行動のレパートリーを増やし、それらを適切にご自身で活用できるようになることを目指します。

治療の実際

治療の進め方は、個々のケースにより異なりますが、以下のような大枠の下に進めさせていただいております。

  1. 治療目標を立てるために、現在困られていることやカウンセリングで扱いたいことなどを中心にお話を伺います。
  2. 今後取り組んでいくことについて、患者さんとカウンセラーとで一緒に目標を決めます。
  3. 目標に沿って、具体的に取り組む内容を決定します。その際、カウンセリング内だけでなく、実生活の中でホームワークとして取り組んでいただくことがあります。
  4. カウンセリング内で、取り組みの結果を振り返り、有効かどうかの判断をします。有効でなければ別の取り組みを一緒に設定します。
  5. 3~4の工程を繰り返し行います。
  6. 目標が達成されたことを一緒に確認できたら、カウンセリング終結とします。
  7. 数か月後にフォローアップの面談を行う場合があります。