うつ病と適応障害との違いについて
うつ病と適応障害との違いについて
毎年やらせていただいている、あるお役所のセミナーが、今年も始まりました。
毎年思うのですが、参加される方になんとか分かりやすくご説明できないかと工夫しているうちに、自分自身の頭の中も、より整理されていく気がします。
今年は、テーマとして、「適応障害」と「発達障害」を選びました。
両方とも、最近のメンタルヘルスケアにおいて避けることのできないテーマだと思ったのです。
発達障害については、またいずれご説明することとして、今回は「適応障害」について書きたいと思います。
皆さん、もしかしたら、「『うつ病』という病気は何らかのストレスに対する直接の反応として発症する」といったイメージを持ってらっしゃらないでしょうか。
そうだとすると、そこには、少し誤解があります。
実は典型的なうつ病の方の場合、発病のきっかけが明らかではないことが多いのです。
それに、そもそも、うつ病という病気が医学的に注目され、概念が確立してきた理由の一つには「どうも、明らかな誘引なしに、うつ状態になる人がいるらしい」という事実の発見があるのです。
そこから、「ストレスに対する反応でなしに発症するのであれば、むしろ、自発的にうつ状態になってしまう、体質的な、(脳の)病気があると考えるべきでないか」と考えられ、「心の病気ではない、脳の病気である、『うつ病』」という概念が確立されたのです。
それでは、普通、皆様が考えられる、「ストレスに対する直接の反応としての、『うつ状態』」は、病気として何と言うかというと、それを医学的には「適応障害」と呼ぶわけです。
最近では、よく「……によって心が折れた」などという言葉が使われますが、その状態は、「うつ病」ではなくて、「適応障害」なわけです(図を参照してください)。
分かりづらい、回りくどい話をしてしまいましたが、なぜこんな話をしたかと言うと、実は、うつ病と適応障害とは、かなり違う病気だし、対応も違うからなのです。
そして、その二つを混同してして、あまり治療的に良くない対応をされているケースが多いので、ご説明したかったのです。
具体的な対応については、次回以降書かせていただくことにして、今回は、うつ病と適応障害との違いを比較した表のみ、あげさせていただきます