自分の得手不得手について

自分の得手不得手について

先日、趣味でやっている楽器の発表会がありました。

演奏した曲目は、とても難しくて、練習でも100%完璧に吹けるとはいえず…、案の定、本番でも失敗してしまいました。
当たり前といえば当たり前ですが、練習でできないものは本番でできるはずはないですよね…。

あ、これは、私のもう一つの趣味である油絵と比較しているのです

 

実は油絵って、物を正確に上手く描けることを求められることはあまりなく、1枚の絵として何か「味がある」とか「見所がある」ということがあれば許される趣味なのですよね。
そもそも失敗したら、上から容易に塗り直せるし、それに、油絵においては、「たまたま偶然にも自分の力量よりはるかに上手く描けてしまった」といったことが起こり得るんですよね。
このへんは、音楽とは全く違うところだと思います。音楽では、たまたま上手くいった、なんてことはありえませんからね。    

ということで、私にとっては、油絵は、楽器の演奏に比べて、はるかに容易で、楽しめる趣味のように感じます。何しろ、そもそもが全くの自由ですし、評価の基準もあいまい、ゼロから手順書もなしに作っていくので、何をやっても許される、というところがありますからね。

しかし、その辺が面白いところで、人によっては、「完璧な、無(例えば真っ白なキャンバス)から、全く自由に好きなようにしていい、と言われると途方にくれます。決まったことをきちんと決まったように仕上げるほうがはるかに容易です」と仰る場合があります。 

 

当院で施行している箱庭療法という治療法があります。

砂箱に全く自由に、好きなミニチュアを置いていく、という治療法です。全く気楽にやって遊んでいただければいいのですが、しかし、たまに、これができない方がいらっしゃいます。
「完全に自由だと、何をすれば良いかわからない」とか、「「何かお題をください」と仰るのです。もちろん、普通のお仕事などは、キチンと、ほぼ完璧にこなされている方です。

たぶん、決められたことをキチンと、その通りにこなすことが得意でお好きな方、と、決められたことをキチンとこなすのは苦手だけれど、0から何かを自由に作り上げるのがお好きで得意、という方とが、いらっしゃるのでしょうね。

まずはご自分でも、その見極めをして、特に人生の前半では、その自分の特性に合わせた人生設計をしていくのが良いかもしれません。全く逆の特性が必要な職業に着いたら相当ストレスが溜まりそうですからね。

ただ、またまたいつものように話が飛ぶのですが、ユングという心理学者がいます。ユングは、「人生の後半の課題」というテーマで多くの著述をしているのですが、その中で、「今までしてこなかったこと、それも、それまでの自分がやってきたこと、好んできたこと全く逆のことで、むしろバカにしていたようなことをやってみると、すごく意味がある」というようなことを述べています。
人間は、大抵は、自分の好みのことしか、特に人生の前半ではやらず、知らず知らずのうちに、世界が狭くなっているものですからね
人生後半では、「自分がそれをやるなんて想像もしてなかった」というようなことを試しにやってみると、意外にもそこに豊潤な世界が広がっていて、人生がより豊かになっていくかもしれません