私は下手くそですがサックスを習っています。年末にその発表会がありました。
曲はHow are things in Glocca Morraという題名です。
私にとってはとても難しく、仕事の合間を縫って、人生で初めてといっていいほど練習しました。
楽器の練習というのは、ただただ反復練習ですので楽しいものではありません。普段は嫌で嫌でたまりません。しかし、今回は違いました。今回は、先生から「本当にやってみたい曲をやれば?」と勧められて、自ら選んだ曲でした。自然とモチベーションが上がります。
これは森田療法でいう、「生の欲望」と関連してますね! 森田療法では、「たとえ不安があっても、あるいは困難があっても、本当にやりたいこと(これを生の欲望と言います)はやっていこう!。本当にやりたいことならば、苦しくてもやれるはず」という考え方をします。それに則って行動していたと言えますね。
さて、当日なのですが、本番になるとかなりの緊張感に襲われました。この曲は最初の部分は簡単で、あとから難しいフレーズが増えてくるのですが、練習時に手を抜いていた最初の部分で失敗しまくって、緊張感もMAXになりました。これも、常々私自身が来院される方々に、森田療法を応用して「人は高を括って準備を怠っていると、突然不安に襲われますよ」とアドバイスさせていただいているのですが、まさにその実例でしたね、反省してます。
とはいえ、いつもなら、その時点で頭の中が真っ白になってしまうのですが、この時は少し違いました。冷静に自分を見ている部分もあって、「ああ、こんな下手な演奏で嫌になっちゃうなー」とガッカリしながらも、「ま、曲の後半頑張ろう」と自分でも不思議なほどサバサバした感じになれました。
これは何故かと言うと、森田療法で言うところの「目的本位」という意識になっていたからだと思います。これも来院される方によくアドバイスするのですが、人前で何かをする時に、「他人からの自分の見え方」を意識したり、「他人からカッコよく見られたい」という願望のみに着目すると、人はどんどん緊張していきます。そうでなくて、「今、自分が人前でやってることの意味や意図、さらには意義」といったことに立ち返り、その実現化に注力すると、緊張などどうでもよくなるものです。これも森田療法における根本的な教えの一つですね。
私は、発表会の時に、うまく吹くこと以外に「この、名曲なのにあまりにも知られていない曲を、サックス好きな他の生徒さんにぜひ知ってもらいたいなー」という意識もあったのです。
この曲はあまり知られていないのですが、ソニーロリンズのアルバムに入っています。
初めて聴いた時に私はとても感動してしまい、「いつか自分もテナーサックスを吹いてみたいな」と思わせられた、思い出の曲なのです。そして、ぜひ私がこの曲を皆に伝えたいとも思っていました。発表会で演奏している最中も、そういう気持ちで、「自分がカッコよく見えるように」ではなくて、曲の良さが伝わるように、なるべく正確に丁寧に拭くことに努めました。そうすると不思議に緊張が収まったのです。
終わった時には、なぜか不思議と、達成感というよりも、拙い演奏を支えてくださったバックのミュージシャンの方への感謝の気持ちが湧き、思わずお客さんよりも先に挨拶してしまいました。
終わったあとに、何人かの方に、「良い曲だね」とか「素敵な曲でした」とか、お褒めの言葉をいただきました。案の定、上手かったね、とは言われませんでしたけれどね。トホホ…。