谷内六郎をご存知ですか?

谷内六郎をご存知ですか?

緊急事態宣言が解除されて、皆様どこかに出かけたいと思われていると思います。ですが、どこに行っても意外なほど混んでいますよね…。
そんな時、ちょっと郊外の(つまり、ちょっと行きづらいところにある)美術館に行かれるのはどうでしょう?
私は先日、横須賀美術館というところで、「谷内六郎展」を見てきました。


観音崎というとても景色のキレイな場所にあるのですが、ちょっとアクセスは悪くて…。でも私は、そういう時は、良い散歩ができるチャンス、と考えることにしています。

晴れていて暖かい日だったので、この駅から小一時間ほどかけて歩いて行きました。


途中で、こんなのんびりとした景色を眺めることが出来ました。

美術館はこんな素敵な建物です。


さて、谷内六郎の絵なのですが、多くの方が、「どこかで見たことがある」と思われるのではないでしょうか。

たとえばこんな絵です


いつも子供の出てくる、ほのぼのとした絵を描かれます。ただ、そこには、単なるノスタルジーだけではなく、子供の頃に皆が持っていた、世界に対する瑞々しい感性、のようなものが見事に描かれています。上にあげた2つの絵は、それぞれ、「今日突然春が来た!」とか、「冬が来た」というような、季節に関する感覚がありありと描かれていて、私なども、はるか半世紀ほど昔はそんな感覚を持っていたことを思いだしました。


子供といえば、こわい物に対する感受性も敏感ですよね。

それに表した絵も多くて、こんな絵があります。


古い日本家屋で寝たことがある方は、ピンと来ると思うのですが、昔は天井は板張りで、そこには板目の模様があり節穴もあったりしたものです。それらをじっと見ていると、模様が何やら絵に見えてきて、時には怖いお化けのように見えてきたりしました。
この現象は、誰にでもあると思うのですが、谷内六郎自身も書いているように、風邪をひいたりして心身ともに不調の時に顕著になるようです。あまりにひどくなると、精神医学的には「パレイドリア」という症状名で呼ばれることもあるくらいです。
 ところで、谷内六郎にも精神的な不調が時に見られていたようで、有名な精神科医に診てもらっていたという記録があります。この、谷内六郎の感受性豊かな絵は、精神的な感受性の鋭敏さと関連があるものなのかもしれませんね。


精神医学の研究分野の一つに「病跡学」というものがあります。過去の芸術家や有名人を対象に、その方の生き方や作品と、精神医学的特徴とがどのように関連していたか、ということを研究する学問です。その重要な研究テーマの一つに、「創作活動が、その作家の病気の発症や悪化を防いでいた可能性を調べるというテーマがあります。
 確かに、多くの芸術家において、その方が元々持つ(精神疾患とも関連がありうるほどの)鋭敏な感受性が、創作の原動力となっていることが多いようです。しかし、そういった意味のみに留まらず、この創作という行為があったからこそ(作品の中で、ドロドロとしたエネルギーが昇華されたのか…、あるいは、作品を通して社会や世界とのつながりを維持できたからか…)、その芸術家の精神的な病気が重くなることを免れた、ということはよくあるようです。
 ちょっと難しい話になってしまいましたが、まあとにかく芸術は精神に良い影響があるででしょう。また鑑賞する者の精神にもとても良い働きがあります。
今まさに、「芸術の秋」です。皆さまも何か芸術に親しまれてはいかがでしょう?