私はある大学院で、将来カウンセラーになる方に精神医学を教えているのですが、ちょうど前期が終わったところです。
その講義の内容から、皆様にもお伝えしたいことを解説させていただこうと思います。
まず第一回として「精神科と心療内科とはどう違うか」ということを説明しますね。
講義では、このようなスライドを供覧します。
スライドで示しているように、心療内科は内科から枝分かれした分野です。そして、その診る患者さんは、「あくまでも内科的な病気が確実にあって、でも、その誘因や、なかなか治らない原因として心理的なストレスがある人」です。
例えば、胃潰瘍や高血圧、喘息といった病気を持つ方のうちの一部ですね(それを一般的に「心身症」と呼びます)。
それが本来の姿なのですが、近年、心療内科の医師が、パニック障害やうつ病まで診られるようになってきて、精神科と心療内科の境界が曖昧になってきました。
一方、精神科は、元々、精神の病気そのものを診ていました。
さらには、これもスライドからわかるように、昔は神経内科的な病気も診ていました。
つまり、「精神神経系の病気を、脳という一つの内蔵の病気として診ていこう」という方針が大前提であるわけですね。
ですから、自ずと心療内科医と、精神科医の患者さんへのアプローチも異なります。
心療内科医は、「確実に身体に病気がある方の、その心にアプローチしたい」と考えますし、精神科医は、「おそらくは脳という内臓に病気がある方の、脳と心にアプローチしたい」と考えます。
ただ、現実には、我が国の精神医学において、心に対するアプローチ(それを「心理療法」と言います)への関心は、残念ながら十分とは言えません。そのため、精神科医によっては心理療法には興味がなくて薬物療法一辺倒になってしまうかもしれません。
さて、ここから話がややこしくなります。理屈としてはこれまで述べてきた通りなのですが、現実は異なります。街中には、現在メンタルクリニックが溢れています。
その多くは看板に、「心療内科」あるいは「精神科、心療内科」と書かれています。しかし実情としては、そのほとんどのクリニックで診療しているのは「精神科医」なのです。
御多分に洩れず、当院のパンフレットにもそう書かれています。
しかし実は私自身は、大学病院の精神医学教室で教育を受けた「精神科医」です。
こういった日本独自の状況の原因としては3つあげられます。
1つめは、そもそも心療内科医というのはとても少ないのです。
日本には80校ほど医学部があるのですが、そのうち心療内科の教室があるのは、わずか7校程度なのです。
2つめは、我が国では開業医の標榜科(看板に、何科の医師か載せることですね)がかなり自由なのです。いわば自己申告制なのですよね。
3つめは、精神医療への偏見です。どうも我が国では精神科というと偏見があり、来院する際のハードルが高いという実情があります。そして、来院された際にはすでに相当重い病状になられているということが多いのです。
多くの精神科医は、そのハードルを下げたいと考えています。そのため「心療内科」と標榜すると、少しソフトなイメージがありますし、患者さんが受診されやすいのではないかと考えて、そう看板に出すのです。
ですので、率直に言えば、メンタルクリニックを受診する際に、そこの看板が心療内科であるか精神科であるかどうかは、ほとんど意味がありません。受診した際に、診察机の向こうにいるのは大抵、精神科医です。
ただ、ご自分がカウンセリングや心理療法を受けたい、といったご希望があれば、それを受けることが可能かどうか、前もってホームページで調べておくことは重要です。前述の通り、一部の精神科の先生は心理療法には興味があまりありませんので。
ちなみに手前味噌になりますが、当院は、院長である私が臨床心理士というカウンセラーの資格も持っておりますし、在籍しているカウンセラーもきちんとしたキャリアのある方々です。
もっとも、全て方にカウンセリングが有用かというと、そういうものでもないのですが、長くなりますので、いずれまた書きますね。
以上、かえってわかりづらい説明になってしまったかもしれませんが、もし受診先の検討の一助になれば幸いです。