箱庭をセミナーでお話ししました①

箱庭をセミナーでお話ししました①

先日、あるセミナーで(このご時世なのでオンラインでしたが)、箱庭療法について、お話しさせていただきました。


座長の聖路加病院の太田先生は、時々患者さんを当院に紹介していただける方で、そのご縁でセミナーに呼んでいただけたのだと思います。
 普通の医師は箱庭についてあまりご存知ないので、まず歴史からお話しして、


そして、箱庭が効果を示すメカニズムについてお示ししました。


治療機序については、スライドの通りなのですが、もう少し補足します。箱庭というのは、患者さん自身も気づいていないコンフリクト(軋轢とか葛藤という意味ですね)が、箱庭の上に表現され、それで初めて自分もコンフリクトの存在に気づき、その後コンフリクトが解消するための心の作業をすることによって治っていく治療法と言えると思います。

スライド右側の図に示したように、箱庭を舞台に(あるいは箱庭が一つの通路のような役割を果たして)製作者が、自分の心の内面と深いコミュニケーションをして、そのうちにいつかコンフリクトに折り合いをつけていくと言いますか…。

ただ、注意が必要なのは、メンタルで悩んでいる人皆さんに、この治療機序が有効かと言うと、そうではないということです。

むしろ、この、「自分で気づいていないコンフリクトが病気の原因であり、それが解決すれば治る」といった患者さんは少数派でしょう。外来にいらっしゃる多くの、うつ病の方や、神経発達障害の方はこのメカニズムは当てはまらなし、箱庭が有効ではないでしょう。

箱庭は(私見ですが)、あくまで少数の方に有効な治療法なのですが、その方達には極めて有効で、不思議なことに、大体似たような経過を経て、改善されていきます。


不思議なことではありますが、スライド右側の川㟢先生のご著書から引用させていただいた図を見ていただくと、結局は、前述の「気づかれていなかったコンフリクトが現れて、そのコンフリクトに何らかの折り合いがつけられて治っていく」という経過であることがご理解いただけるかもしれません。


以上が箱庭療法の概略なのですが、当日も強調したように、時に箱庭について、「一回作っただけで、自分の問題点が治療者に分かり、それを伝えてもらうことで自分が治る」といった誤解を持たれる方がいらっしゃいますが、そういうものではないのです。繰り返しになりますが、箱庭療法というのは製作者が箱庭を一つの通路として、ご自分の内面と深い真摯なコミュニケーションを積み重ね、それで治っていく、というものなのです。

そういった治療法にご興味のある方は、やってみられてはいかがでしょう? 前述の通り多くの方に合う治療法ではないので、合わない方にはそれは申し上げざるを得ないのですが…。
(次回のブログで、続きとして、当院での箱庭の施行法の特徴についてご説明致します)