「president」のこと、そして当院の治療方針について

「president」のこと、そして当院の治療方針について

今本屋さんに「president」という雑誌が並べられています。精神医療に関する特集が組まれています。
その中には、私がいつもお世話になっている慈恵医大精神科准教授、舘野先生が書かれた「精神科治療『最新』ガイド」という文章もあり、森田療法にも触れながら簡にして要を得た説明がなされているので、ぜひ読まれることをお勧めします。



そして、その中では、森田療法が受けられる医療施設という表もあり、恥ずかしながら当院の名前も挙げてもらっています。


舘野先生のような本当の森田療法の専門家のいらっしゃる施設と並べていただいており、恐縮しております。
(私が、きちんと森田療法を学んでいない、という意味ではなく、私は他にも箱庭療法などもやり、森田療法のみの専門家ではないのです…)

さて、この雑誌には、もう一つ面白い記事が載っています。「『頼れる精神科医、危ない精神科医』の見分け方」という記事です。これも非常に皆様の参考になると思います。特にYou Tuberとしても有名な樺沢紫苑先生が、非常にニュートラルな現実的なお話を展開されています。
先生は、まず、「転院が容易な環境にある東京都内では精神科の再診率が50%とも言われている」と書き起こします。つまり、精神科に受診された
なんと半数の方が、もう医療機関を受診しないか、他の医療機関を受診するということです。樺島先生も、「いかに精神科の患者さんが『すぐに医者を見限るか』がわかる」と書かれています。そして、「しかし、患者が『この医師は信用できない』と思っていても必ずしもその判断が正しいとは限りません」と続けます。
さらに、「精神科は『望んだ薬を出してくれるところとは限らない…。(中略)医師の目線からすれば必ずしもそれ(睡眠薬を出すこと)が正解ではないということがあります」などとも書かれていて、まさに「我が意を得たり」と私は感じました。

同様な齟齬は、診断書を書く判断などにも見られると私は感じています。しばしば当院にも、「会社に行けないんです。休める旨の診断書だけ書いてください」という方がいらっしゃいます。そういう方に「いくらでも休んでいられるような診断書を書いておげますよ。しばらくは会社のことなんて考えないようにしましょう」といった耳あたりの良いことを言う医師が実際いますし、そういう医師が患者さんから評価が高いのでしょう。

しかし、そういった対応が医学的に正しいとは私は思いません。会社に行けなくなった要因を明らかにしていって、もし患者さんご自身にも変わるべきところがあれば、変わっていかれる援助をするのが精神医学だと考えています。

同じ記事を樺沢先生と共に執筆されている和田先生は、良い精神科医を見分けるチェックポイントをいくつか挙げておられます。

その中では、3の「医者が『社会適応を考えてくれるか」というポイントは大事です。患者さんの社会適応を考えたら、とても、「とりあえず休みましょう。いくらでも休んでいて良いですよ」などと私は言えません。当院ではまずは、なんとか休まないで済むような方策を考えますし、休職に至ったとしてもなるべく速やかに、いわゆる
リワークプログラムに参加してもらうことをお勧めします。それが結局は早い着実な復帰に繋がると考えているからです。


さて、樺沢先生のお話に戻りますが、先生は、「医師との賢い付き合い方5選」というリストをあげられています。

そのうちの4について、先生は、以下のように捕捉されています。「ネット上の悪い口コミの中には信頼関係ができないうちに患者が医師を見限ってしまったと思われるものもあります。転院するのは3ヶ月様子を見てからでも遅くはありません」。これも、医者と患者さんとの間の齟齬の核心をついた鋭いご発言だと思います。

当院の場合、「3ヶ月は来て欲しい」などとは申し上げづらいのですが、少なくとも初診の時の印象だけで悪い口コミをあげられるのちょっと…とは感じております。そういったお互いに不幸な展開を防ぐためにも、これから初診される方には再度、「当院は患者さんが希望される通りの医療行為をそのままご提供する方針ではない」ということ、そして、「患者さんにとって耳当たりの良い言葉のみをおかけするわけではない」ということを述べさせていただきたいと思います。