漢方薬とオキシトシン

漢方薬の人参養栄湯について

漢方薬の勉強会に参加しました。



人参養栄湯という漢方薬がテーマです。研究会の趣旨としては、「高齢者の方にとても良いから使うべき」というものでした。
確かに
、高齢者の方の様々な症状にかなり有効とのデータかいろいろあるようです。


ただ、むしろ私が気になったのは、一つの基礎的研究です。
「ゼブラフィッシュ」という魚を用いた実験をすると、(詳細は省きますが)社交性を増し、さらには、不安な時にフリーズしてしまう現象を減らすというのです。



私は、この作用がもしヒトでも確かめられるとしたら、お年寄りよりもむしろ、ASD(自閉スペクトラム症)の方に有効な漢方ではないかと思ったのです。ASDの方は、対人交流の苦手さを必ず訴えられますし、さらに、多くの場合は「人から何か言われると頭の中が真っ白になって固まってしまう」と訴えられます。


調べてみますと、すでに比較的多くの先生が人参養栄湯を用いておられます。私がよく引用させていただく神田橋條治先生も以前から言及されてましたし(このブログにも以前私が掲載していたのですが、全く失念しておりました!)、最近まで神田橋先生のところで勉強されていたある先生は、「神田橋先生は、発達障害の方に人参養栄湯を使われているが、皆さん、過敏さが軽減して角が取れて丸くなる」と述べています


さらには理論的裏付けもあります。ある先生は、この人参養栄湯の効果は脳内のオキシトシンというホルモンの働きを介しているのではないかと述べてらっしゃいます。



実はASDの方のオキシトシン系の働きを強める薬の開発は以前から行われているのですが、現在のところ我が国では実用化されていません。その作用がある薬が実は漢方の中に既にあったというのは、驚きであるとともに、ASDの方には大きな福音であると言えるでしょう。

メーカーの思惑としては、「この漢方薬は、お年寄りに有効です」というものですが、それとは別に、これまではあまり有効な治療薬がなかったASDの方の治療に、大きな意義があるのではないでしょうか。今後のさらなる研究が期待されます。