全般不安症(GAD)の薬物療法と心理療法について - 飯田橋メンタルクリニックブログ | 飯田橋メンタルクリニック | 千代田区 飯田橋駅徒歩5分の心療内科 精神科

心配性は病気なのでしょうか? ――全般不安症(GAD)について

「私は昔から心配性なんです」
診察室で、患者さんからよく聞く言葉です。

仕事のこと、家族のこと、健康のこと、将来のこと。次から次へと心配事が浮かんできて、なかなか頭から離れない。

もちろん、誰にでも心配事はあります。しかし、心配があまりにも強くなり、日常生活に支障を来すようになると、精神医学では「全般不安症(全般性不安障害、GAD)」という病気を考えることがあります。

今回は、このGADについて少し解説したいと思います。

心配性とGADは、どこが違うのでしょう?

実は、GADは私ども精神科医にとっても、診断が難しい病気です。
その理由の一つは、そもそも「病的な不安」と「普通の不安」は、どこが違うのかという問題があるからです。

例えば、「空が落ちてこないか」と心配する人がいたとします。この場合には、不安の内容そのものが通常とは異なっています。

一方、「明日の仕事で失敗するのではないか」「子供が事故に遭うのではないか」「自分が重い病気になるのではないか」と心配する人がいたとします。こちらは、心配している内容自体は、誰にでもあり得るものです。

精神医学では、これまでGADにおける不安の特徴を、内容の問題つまり「質」の異常として捉えるのか、それとも程度や広がり、つまり「量」の異常として捉えるのか、という議論がありました。
現在のGADの診断では、
後者の考え方が中心になっています。

つまり、心配する内容が奇妙だから病気なのではなく、さまざまなことを過度に心配し、その心配を自分でコントロールできなくなってしまうことが問題なのです。

そしてGADでは、こうした過剰な不安や心配が長期間続き、落ち着かない、疲れやすい、集中できない、眠れない、筋肉が緊張する、といった症状を伴います。


森田療法では、昔から似た状態を扱っていました

さて、ここで少し日本の精神医学に触れてみます。

このブログでも何度もお話ししている「森田療法」という精神療法があります。
森田療法では、昔から「神経質」
という概念を重視してきました。
その中に「普通神経質」
と呼ばれるタイプがあります。これは、日常生活のさまざまなことが気になり、不安や心配にとらわれやすい状態を指します。

お気づきでしょうか。先ほど説明したGADと、かなり似ているのです。
私は近年注目を集めているこの病気の話を聞くたびに、「この病気は森田学派の言うところの普通神経質なんじゃないかなー、なぜどの研究者も、そのことを指摘しないのかなあ?」と感じておりました。

たまたま先日、森田療法の専門家であり、私の元上司でもある中村敬先生の講演をお聞きする機会がありました。先生は、かなり明確に、GADと普通神経質とは、ほぼ同じものと仰られていて、まさに我が意を得たり、と思いました!



GADは、どのように治療するのでしょう?

GADが、森田療法における普通神経質と同様の病気であるならば、森田療法学派の末席を連ねる私としては、その治療は、これまでにも馴染みのあるものです。

まず薬物療法ですが、これまで広く使われてきたのがSSRIという種類の抗うつ薬です。
抗うつ薬という名前がついていますが、うつ病だけでなく、不安症にも効果があることが知られています。
また、最近ではSNRIという種類の抗うつ薬についても、その有効性が改めて注目されています。

一方、私は、GADの治療では心理療法も非常に重要だと考えています。
というのも、GADの患者さんは、単に不安が強いというだけではなく、不安や心配との付き合い方を誤解して、かえって苦しみを深くしていることが多いからです。

例えば、何か心配事が浮かぶと、それを何とか解決しようと延々と考え続けてしまう。しかし、考えれば考えるほど、別の心配事が浮かんでくる。こうした悪循環に陥っていることがあります。
森田療法では、この悪循環を変えていくことを目指します。

具体的には、森田療法では、不安を無理に消し去ろうとするのではなく、不安があっても、その人が本来やりたいことや、やるべきことに目を向けて生活していくことを促します。症状を取り去ることを目的とせずに、生活を立て直すことを目標にするのです。
これは、GADの患者さんにとっても参考になる考え方だと思います。

中村先生も、講演のなかで、この森田療法的な方法がGADの方の治療に有効であることを強調されていました。




「心配性だから仕方がない」と諦めないでください

GADの患者さんの中には、ご自身で「これは病気ではなく、自分の性格だから仕方がない」と思っていることがあります。
しかし、元々心配しやすい気質がある場合にも、たとえそれ自体はなくならないとしても、それによって生じている生活上の困難を軽減することは可能です。

不安を完全になくすことが必ずしも治療の目標ではありません。「不安があっても、それに振り回されず、自分の生活を送れるようになること」、私は、それが大切な治療目標だと考えています。

もし、さまざまな心配事が頭から離れず、日常生活に支障が出ているようでしたら、一度、精神科や心療内科で相談してみてはいかがでしょうか。
その際には、薬物療法だけでなく、心理療法についても相談できる医療機関を選ぶのも一つの方法です。
当院でも、薬物療法と心理療法の両方を大切にしながら診療を行っています。
長年の心配性だからといって、諦めないで頂きたいと思います。