うつ病と適応障害の違いについて③

うつ病と適応障害の違いについて③

うつ病と適応障害の違いについて③

前回の続きです。まず、この図の説明から。
以前から、「どうも、典型的な従来型のうつ病とは違うタイプの『うつ』の方がいるらしい」ということは研究者の間では話題になっていました。

コロンビア大学では古くからこの問題に着目し、「非定型うつ病」という一群の方を見出しました。このタイプの方は、一見すると、性格の偏りや未熟さから、うつっぽくなる、と思われていたのですが、コロンビア大学の研究者達が、ある薬を用いたところ、非常に良くなられたそうです。そこで「薬がこれだけ効くのだから、これは心の病気ではなく、脳の病気なのであって、うつ病に入れるべきだ」と主張したわけですね。
また、日本の広瀬先生という有名な研究者は、「高学歴のエリートに見られやすい『うつ』として、『逃避型抑うつ』という一群の方を見出しました。この方々も、従来型のうつ病の方とはかなりニュアンスが異なるのですが、広瀬先生自身、「この方々には、抗うつ薬を使うべきだし、時に躁状態も見られる時さえあるので、その時は躁鬱病の薬をつかうべきだ」と書いておられ、「心の病気」というより「脳の病気」と考えておられるのが分かります。
一方、故樽味先生が提唱し、一時学会で一世を風靡した「デイスチミア親和型」という概念があります。樽味先生は、あえてこのタイプの方に対して、「脳の病気」とも『心の病気とも言及することを避けていたように感じられます。
ここからは非常に難しい議論になってしまうので、あえて大雑把にくくってしまうと、このデイスチミア親和型を中心として、周辺のタイプ、つまり、従来型うつ病とは違うタイプの『うつ』を含めて、「現代型うつ病」と現在では呼ばれています(スライド中の『現代型うつ病』というのは、松浪先生という研究者が打ち出した概念であって、もう少し厳密な基準があり、このブログでいうところの、大雑把な意味での『現代型うつ病』とは意味が異なります)。

そして、「適応障害」という病気に対する治療法は、まだまだ確立していないので、とりあえずは、「従来型うつ病」に対する治療法よりは、この「現代型うつ病」に対する治療法、対応法を参考にして、「適応障害」の方には対応するべきでは? と私は考えています。

「現代型うつ病」に対する治療法、対応法については、東京女子医大前教授の坂元先生が、まとめられています。

簡単に補足すると、「現代型うつ病」の方々には、「あなたは病気なのだから、あなたには全く責任はありません。ただただ休んでいて良いですよ。休んで薬を飲んで飲むと良くなりすよ」と言うのは良くない、ということですね。実際、そういう対応をされて、全然良くならない方が多くいらっしゃいます。
そして、従来型うつ病では治療的に必須と思われていた「休養」は必ずしも良いわけではなく、「多少つらくとも」仕事や家事をされことも必要と考えられています。これもある程度当然のことで、近年多くの研究者が指摘しているように、労働することの喜びって実際あると思いますし、何かを成し遂げたことによって満足や自信が生じることも多いですよね。
坂元先生は、論文の本文の中で、「休職を希求する例に対しては『大丈夫、ここが頑張りどころ!』とそっと背中を押すことが必要な場合もある」と述べられています。
ところで、薬物療法については、坂元先生は「時に奏功することもあるので一度は使うべきだ」と述べられています。私もよく、「あなたは、うつ病ではないですが、ある程度は効くので、抗うつ薬を飲まれてはいかがですか」とおススメすることが多いです。
現代においても数少ない「適応障害」と銘打たれた本を書かれた松﨑先生も、「ストレスが原因となって生じている症状を取り除く、つまり身体的症状であれば薬を使って症状の緩和を図る」といったことは有効であると述べられています。さらには、薬物療法によってストレス感受性が低下することもある、とも述べられています。
その松﨑先生は、適応障害の治療について「環境を変え、人を変え、症状を変える」とまとめられています。
この「人を変え」というところが分かりづらいと思いますが、具体的には言うと「個人的脆弱性の克服と耐性の強化」をはかることです。つまりストレス対処能力を変えていくことですね。カウンセリングを受けたりして、自分でストレスコントロールができるようになってもらうことです。松﨑先生は、「適応障害を克服して新しい自分になっていくということが非常に大事とも書いておられます。
 今回のブログの締めとして、先生の言葉をそのまま引用させて頂こうと思います。
「ストレスの原因を取り除き、つらい身体症状を緩和させることも大切だが、それ以上に患者さん自身が自己の問題に気づき、以前とは異なる適応の仕方を身につけていくことが大変重要」
まさに、その通りですね。
最後の最後に、主に職場側の立場からの適応障害への対応を考えられた吉野聡先生のご著書からも引用しますね。
実際のところ職場というのはがんばらなくては務まらないか場所でもある。「現代型うつ病」については、ある程度回復をしてきた段階で、ほどよい「がんばり」を要求することも必要となってくる。
従来型うつ病に対した対応方法を現代型うつ病に当てはめてもうまくいかない」
この辺りは、今実際に悩んでおられる方々にとっては、非常に厳しい発言とは思いますが、真実をついていると思うので、あえて引用させていただきました